カルチャーエッセイ

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洛 匠

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  • 2017.09.04 17:58




 

洛匠の店頭にある一本の長い松の木                                                 2016  3  20

 

 

洛  匠 

 

私がその魅力的な茶屋、洛匠を発見したのは十余年前のことだ。京都で有名祇園ねねの道という趣のある道がある。十七世紀、豊臣秀吉の死後、その夫人が秀吉を弔うための高台寺を建て、その向いには圓徳院という自身のための小さな住居を建てて住んだが、その麓の道がまさにその夫人の名をとってねねの道と名づけられた。この道はだいぶ前に道幅いっぱいに御影石が敷き詰められ、深い趣を醸している。

 

 

その道には見栄えの良い人力車が列をなしており、世界各国からの観光客を乗せて古風なその町一帯を巡るが、人力車を引く青年の案内と説明もそれらしく聞こえる。

 

 

私は主に徒歩だが、一度人力車を利用したことがある。ずっと前にかき氷屋だった家やそば屋、舞妓さんの上がる料亭も教えてくれた。ねねの道のある地点で降りて中をのぞいてみろと言うのでそうしてみると、木の窓格子の隙間から枯山水の庭と池その造景と池を泳ぐ錦鯉のあまりの美しさに口が開いたままになってしまった。

 

 

30分ほど人力車に乗って降りると、さっき見たあの池のある建物に入ってみた。そこは茶店だった。ホールのガラスのドアを押して出ると、韓国人の目には小さく見える庭園があり、細長い池には自然石からなる苔の生えた独特の石橋がかかっており、その下には赤、白、金の錦鯉が40余匹が戯れているが、中にはゆうに私の腕の太さの四倍はありそうなものもいる。実に豊かで美しい風景だ。人力車の青年がその前に立ち止まり、しかも木の窓格子ぞいに見せてくれた魅力がなかったら、この店を見つけるのはずっと後のことだったに違いないと思わされる。

 

 

私はその情景に惚れこみ、京都に行くたびにその茶店、ねねの道の町を美しく装うことに献身してきた老人の嫁が二代目として経営する洛匠に訪れるが、京都にわたしを訪ねてきた人々も必ずそこに案内する。すると皆一様に惚れこみ、ここは世界第一の茶店だと感嘆してやまない。

 

 

私の本を読んだご主人は、韓国から作家が来たと周りに知らせ、いつも店の名物であるわらび餅をもたせてくれる。わらび餅は舞う羽のように柔らかく軽い黄な粉をまぶした蕨の餅だ。一日しかもたないその餅を韓国に帰るその日に買って来もする。たくさんの人々が訪れる豊臣秀吉の菩提寺でもある高台寺のすぐそばなので、いつも人々で込みあい、カウンターに山のように詰まれたわらび餅もすぐに売り切れる。

 

 

京都に行くたびに訪れる魅力満点の池を持つ洛匠は、主人であった老人がそこに住みながら一生をかけて装いをこらしたところだ。その建物だけでなく、ねねの道にも手を入れ、道沿いに桜の木を植えた。三月になると淡いピンク色に染まるその道は、京都でも最も京都らし高級な道だ。

 

 

悠々と踊るような錦鯉を眺めていると、自然と微笑みが浮かぶが、同志社大学で勉強していたときにはあまり行くことができなかった。

 

 

3年前に満98歳で亡くなるまで、この町のためにたくさんのものを施し、その道に多くの桜の木を植えて引き立たせるために献身した老人の功労を刻んだ碑石が、彼の死後、世界各国からの観光客が行き来するねねの道に建てられた。

 

 

代を継いで施される美しい精神まで、さすが洛匠世界第一の茶店

 

 

 

 

 

 

 

 ずっと前に私がその隙間からのぞいて見た木の窓格子  -  京都   2016  12  4


 洛匠の池の名物、自然石の橋  – 京都 ねねの道   2016  3 19

 

洛匠の中から眺める庭園  -  京都   2016  12  6


 

  

洛匠のカウンターに積まれた名物‘わらび餅’ 京都 2016  12  4

 

 

 

町のために奉仕するポスターのモデル。 洛匠のご主人

    

茶店 洛匠の名物石橋と錦鯉   -  京都 ねねの道   2016  12  6

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 
















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