カルチャーエッセイ

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料理

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  • 2017.06.21 09:10

 

 

                                                                               2017  3  20

                                                                                      

料 理

 

 

お店というものは外観をみただけでもなんとなくわかる。おいしいかどうかが。

 

‘柚子屋旅館’というところがある。京都祇園の中心部にランドマークのような八坂神社のすぐ隣、人通りの激しい大通りなのに、大きな神社の横に古びた狭い木の門が一つあるだけのせいかあまり目にはつかず、よく訪れる寧々の道に行くには必ずここを通らなければならないのに、いつも通り過ぎていた。

 

その前を何度か通り過ぎるうちに木の門があるのに気づいた。そこには‘柚子屋旅館’と書かれていた。誰かが出入りするとその門が自動的に開く。くぐるとすぐに急勾配の石階段があり、その上に奥深い家が見える。

 

長い歴史が香るその伝統家屋が好奇心を刺激し階段を上ると、扉がすうっとひとりでに開く。黒い石が敷かれた品のある入り口には大きな籠いっぱいに積まれた黄色い柚子が視線を引く。着物の女性が親切に迎え、思いついて「ここはお食事処ですか」と聞くと、「はい、上は旅館になっていて温泉もあります」という。

 

少しだけ覗いてみるつもりで階段を上がったが、古いクラシックな雰囲気に外見だけでも深い味がわかり、案内されるままに席に座った。

 

多少暗く燻したような雰囲気で、ガラスの外には日本式裏庭が見え、水が岩を走り落ちている。適度な間隔で並べられたテーブルのレイアウトは見栄えがよく、中国語も聞こえてくる。私は初めてだが、たくさんの日本人と外国からの観光客の間ではすでに有名なようだ。

 

普通は予約が必要ということだったが、この日は運よく座ることができた。昼食は五千円と一万円の二種類。二つとも柚子料理のコースだ。入り口でみた大きな籠に積まれた黄色い柚子の山をみるだけでも涎がでそうだ。

小さく円い器におさまった15種類の料理がひとつのお盆で出されるが、その色彩と模様に目を奪われる。睦まじく、可愛らしく、おいしそうだ。海老と魚、野菜から日本特有の細やかさと愛らしさが滲み出ている。ちょうど紅葉の季節で赤ちゃんの手のひらのような葉をつけた紅葉の枝がひとつ添えられていた。

 

崩すにはもったいない一つ一つの味を日本のお箸で少しずつ崩してゆく。スープがつき、メイン料理はおいしい魚だ。すべて柚子の味が添えられている。最後に出てくる雑炊の上には熟した果肉をつぶした柚子がまるごとのせられ、サービングする着物の女性が指でそれをぐっと押し出してくれるのを口にすると、ごはんと混ざって味が甘酸っぱい。

 

日本料理といえば、寿司、刺身、天ぷら、そして懐石料理が思い浮かぶ。

 

日本料理は世界的に高級なイメージを持っている。貴い芸術として遇されている。どの国でも価格も高い。数ある日本料理の中でも日本では京都の料理の繊細さが極めて美しい上に味もよく、一番に指を折る。京都の料理は京料理と呼ばれ、京都で夕食を食べるためだけにわざわざ東京から2時間15分をかけて新幹線に乗って行くという話も聞いた。

 

この前、日本では一汁三菜が基本という話を書いたら、日本から日本語で感想を寄せてくれた方々が、ごはんにおかず一つだけという家も多いはずだと教えてくれた。確かに、韓国のコンビニにも梅干一つが入った日本式おにぎりがある。日本ではどんな分野にも端正で落ち着いてシンプルかつ質素な面があるが、料理ももちろんそうだ。無所有、質素、倹約の美徳は韓国がずっと昔に伝えた仏教の影響ではないかと考えてみる。

 

そうかと思えば、母の歌碑の建つ青森の旅館の朝食と夕食は、韓国の全州スタイルにも劣らずいろいろなおかずがお膳狭しと並べられたもので、40年前に父とともに接待された京都の高級料亭の延々と続くコース料理の思い出も鮮やかだ。こうした何万円以上もする高級料理店が京都にはかなりある。

 

日本の大学で勉強していたときにはそんな時間もなかったが、それと前後してあちこちと探索し、それほど高くなくしかも品のあるお店を両手で数えるほど見つけ出し、私だけの資産としている。

 

そのうちの一つがこの柚子料理だ。五千円という価格に比べ、豊かで歴史の重厚さがあり、何よりも味が生きている。どこでも味わったことのない独特の味だ。日本から私に会いにきたり、ソウルから京都に行く方々にそっと耳打ちしてあげたい私の隠れ資産の一つだ。

 

 

 

子屋   -  京都   2016  12  5  

柚子屋入り口に積まれた柚子  -   京都   2016  2

    15種の前菜料理 – 京都 柚子屋   2016 2

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熟れた柚子をぐっと押しつぶすと果汁がご飯と混ざっておいしい  -  京都 柚子屋  2016  2

 

柚子屋レストラン   -  京都   2016  2 

 

 

 

 

 

                    

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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