カルチャーエッセイ

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晩餐

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  • 2017.07.18 21:45

 

 

     長嶺安政 日本大使ご夫妻                                                                                                   2017  7  14

                                                                                                                                

                          李承信ので書くカルチャーエッセイ

                               

この道はいつか来た道

 

 

最近、日本大使官邸に二度ディナーに招待されました。

 

昨年1月の予定だった韓昇州先生が日本政府からの勲章授与記念晩餐が、こともあろうに日本大使の本国召還により5月末に延期となり、先週は鈴木秀生総括公使の離任記念晩餐がありました。

 

二回とも長嶺安政大使の名前による招待でした。

日本大使官邸は城北洞にありますが、外交官邸の数多いそこでも日本大使官邸の敷地は相当に広くとられています。

 

アメリカから帰国して20余年、何度かここに招待されましたが、一度は母が日本外務省の功労賞を受賞したとき、日本までは行けなかったので、この官邸で受賞式がもたれました。白いチョゴリに黄緑色のチマをはき、注意深く挨拶をしました。ずいぶん昔のことなのにここに来るとあのときの上気した母の姿がいつも思い浮かびます。

 

何年か前、東日本大震災の1年後に、韓国から救助・援助活動に携わった方々を招待してくださいましたが、当時の日本大使がスピーチの中で私の詩二首を詠み上げもしました。

 

富裕な国らしく庭園も応接室もとても広く、そこで互いに挨拶を交わして隣室の食堂に移動し、官邸つきの神戸からきたという料理師の料理を味わいました。おいしい日本酒も添えられていました。

 

10名足らずの少人数なので、大使の挨拶と招待された側の答礼が終れば、何かの話題から話が始まり、やがて二つ三つのテーマへと分かれていきますが、政治的事案や両国間の鋭敏な事柄は避け、受賞の話、最近の世の中の話などをしているうちに、親交が深まります。

 

最近京都でしばらく勉強して感じたことですが、日本人には素晴らしい面が実にたくさんあります。誠実で、正直で、親切で、約束をよく守り信頼できる等、学ぶべき点が多いです。しかし、アメリカに長く暮らしたものの目には、彼らはユーモア感覚が足りずいつも深刻に見えます。韓国人同士よくいう冗談もあまりせず、私がちょっと冗談めかしていっても、そのまま受け取ってしまうので、次からは冗談も言えなくなります。

 

例には事欠きませんが、ひとつあげるとすれば、昨年私が京都にいたとき、ソウルから友人が来たので、同志社大学のキャンパスにある尹東柱の詩碑と鄭芝溶の詩碑に案内したとき、いつも冗談をよくするその人が、私に向かって「ああ、この二つの詩碑の間に李承信の詩碑を立てるスペースが十分にありますね」と言ったので皆いっせいに笑いました。それが面白かったので後になって私が尊敬する同志社の文学の教授にその話をすると、言葉通りに受け取ってしまい慌てたことがありました。

 

日本大使官邸の雰囲気もある面では似ています。 素晴らしい官邸と庭園に素晴らしいスピーチ、美しくおいしい料理にマナーと完璧ですが、でも何かしら seriousness 深刻なものが底に感じられます。私が鈴木公使にその理由を聞くと、日本語の言語構造に由来するようだとのことでした。

 

先回の晩餐では勇気が出ませんでしたが、今度は鈴木公使にもし雰囲気が深刻になったり、終盤にだれてきたら、私が歌でもうたいますといいました。

 

到着したばかりの長嶺大使が「今日は歌をうたわれるそうですね。詩の朗読ですか」と私に尋ねました。日本語で歌はうたう歌でもあり一行詩の短歌でもあるので、詩人の私が歌をうたうというので短歌の朗読と理解したわけです。

 

なにはともあれ、八品のコースからなる食事を終え、そのときがきたので、勇気を出して伴奏もなしにいくつかの歌をうたいました。私が好きな‘I bless the day I found you’と、幼い頃世界的な音楽家を夢み、満州で音楽の先生までした父が家で古いピアノを弾きながら歌い、その意味もわからないまま私の頭に入力された‘この道はいつか来た道’、日本の歌曲と同志社大学修了後に京都で覚えた日本の国民歌手美空ひばりの歌をうたいました。

 

韓国系である美空ひばりの‘川の流れのように’は1400曲をうたった彼女が晩年に人生を振り返る歌詞がすてきな歌で、サビの部分では皆がついてうたうので騒々しい雰囲気になりました。

 

李明博元大統領の任期末ごろから気まずくなった両国の関係を知らないわけではありませんが、誰一人そのことに触れませんでした。北朝鮮の核ミサイルの話もしませんでした。私たちは韓国の中の日本であるその家で日本の絵を鑑賞し、芸術的な料理とお茶を味わい、韓国語と日本語と英語で歌をうたい楽しみました。私のそばに座られたあや子大使夫人とは、どうすれば韓国にいる間に韓国語を効果的に学ぶことができるかを話し合いました。ともに語り合うべき話は実にたくさんあります。

 

政府とその首脳があえて前面に出る日韓関係もありますが、こうして文化と芸術と料理と歌を通して互いの心を分け合い、離れてしまった距離を狭める文化外交、民間外交の方がより尊いのだと今更ながら思わされました。

 

 

 

                                 祝賀晩餐後  -  城北洞 日本大使官邸   2017  5  30

                                                    晩餐   -  日本大使官邸   2017  7  6

          8品のコースの前菜料理、詩のように料理にも季節感覚が取り入れられている              

                                        晩餐後の歓談  -  日本大使官邸の応接室   2017  7  6

  鈴木秀生公使(右から二番目)のさよならパーティー  -   2017  7  6 

 

               

 

 

 

 

 

 



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