李承信の詩で綴るカルチャーエッセイ
2016 5 20
銀 閣 寺
銀閣寺はその入り口が独特だ。6メートルの高さの椿の垣根が整然と立ち並び、まるで巨大な緑色の城壁の間を歩いているような気分だ。
筆文字で書かれたすてきなチケットを受け取って中に入ると、左側に見目の良い松の木が二本目につき、さらに奥に入ると白い砂が敷かれた枯山水の庭園に、山のように高く盛られた向月台が見える。島国の日本の波と富士山の姿を形状化したものだが、とても珍しくてつい目がそっちにいってしまう。
その向こうがこの寺の主人公である銀閣、正式名称観音殿であり、各階ごとに建築様式が異なる。てっぺんの楼閣には金銅の鳳凰が東向きに立てられている。ここは中世日本の武将文化と禅宗文化を融合させた東山文化の発祥地としての意味が深い。
金閣寺の楼閣が金の漆からなるため、よく銀閣寺には銀がどこにあるのかと言われる。金閣寺式に言えば銀閣というこの楼閣を銀色に塗らねばならないが、古びた真っ黒な木材のままの国宝であり、その前に立つと長い歴史の気品がにじみ出す。
順路沿いに山の中腹まで登ると、銀閣寺と枯山水の庭園、京都市内の一部を見下ろすことができる。京都は真冬でもそれほど寒くないせいか、12月だというのにベルベットの敷物のような黄緑色の苔がことのほか輝いてみえ美しい。
京都には2千余の寺刹があるが、そこを訪れる観光客たちは、その建築と美しい庭園を見ようと思えば三、四日では間に合わないのでいくつかを選ぶしかなく、京都も世界の都市がそうであるように何日かでまわりきれるところではないことを深く悟り、必ず再訪することになるが、ガイドブックの影響のせいか、金閣寺と銀閣寺では主に金閣寺が選ばれることになる。
楼閣に金をめぐらせた姿が特異なので、絵葉書やカレンダーには雪をいただいた金閣寺の楼閣がよく使われるが、そこには三島由紀夫の小説『金閣寺』も一役買っている。
金閣寺の庭園も見る価値のあることは確かだが、二つのどちらかを選ばねばならないとしたら、私ならきらめく金色よりは品があり幽玄な美しさの銀閣寺を選ぶだろう。
そのように私は銀閣寺を好み、その庭園の気品と洗練さを愛する。春の新緑もよく、秋の紅葉も美しく、どの季節もすてきだが、何よりもベルベットのような苔に沿って銀閣寺の丘の道を登ると、木の一本一本、石のひとつひとつに込められた精誠と静けさと奥ゆかしい平安が胸の奥深くにしみてくる
銀閣寺の入り口のすぐ手前の左側にある小さな路地に入る。それは大きな‘大’の字が描かれた大文字山に続く道で一時間ほどで登りきれる。わたしの部屋の前の鴨川からいつも眺められるその山に登りたくて、道を聞き聞き三度行ったが、上りの道もよく、しっとりと汗に濡れながらついに頂上にいたると、120万の人口に比べかなり大きく、よく整理整頓された涼やかな京都の市街地を見下ろすことができる。
京都は盆地なので真夏には40度も超えるほどだが、四方を山に囲まれているせいか、それほど暑苦しいという印象はない。
私は故郷であるソウルを自慢するたびに、こんなにも山がたくさんある大都市は他にない、東京、ニューヨーク、ワシントン、パリ、ローマ、ロンドンを見よ、どこにこんな山があるかと言ってきた。京都のこの山の上に登ると、都市全体が完全に山に囲まれていることがわかる。ソウルのような山をもつ都市は世界にないという言葉は二度と口にできない。 京都にわずか二、三日の予定で旅行に行くという人に尋ねられても、私の推薦リストから銀閣寺がもれることはない。ついでに足を延ばしてその後ろにある大文字山も登ってみれば、錦上花を添えるとはこのことだろう。
真っ白な砂で日本の象徴である富士山を演出した庭園 – 京都 銀閣寺 2016 3
砂で広い宇宙を描いた枯山水の庭園 - 京都 銀閣寺 2016 3 国宝観音殿を配した池と庭園 – 京都 銀閣寺 2016 3
国宝観音殿 - 京都 銀閣寺 2016
銀閣寺の庭園のところどころにある真冬でも眩しい黄緑色のベルベットのような苔 – 京都 2016 3
ほぼ毎回、庭園と東山を見下ろすことのできるところで撮る証明写真 - 京都 銀閣寺 2016 3
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李承信
詩人 エッセイスト TV放送人
孫戸妍短歌研究所理事長 京都同志社大学 放送委員会国際協力委員、サムスン映像事業団 & 第一企画製作顧問
歷任
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