念願の必要のない世であれ
今日は長嶺安政日本大使から夕食の招待があった日だが、突然の本国召還により延期となり、静かに周りを見回してこのエッセイを書きます。
前任の別所大使と交代して韓国に赴任して間もなくの長嶺氏に11月の初めに会ったのですが、これまでの親子詩人の日韓関係増進のための努力に感銘を受けたかのように、できるだけ早い時期に大使館にお招きするとおっしゃってくださり、何度か挨拶を交わしました。
その後国中が竜巻に巻き込まれそれどころではなくなったところへ、韓昇州先生が天皇からの勲章を受けることになり、そのお祝いに極少数が招待されもしたのですが、それも無期限延期になってしまいまいした。
国をとりまく国際情勢の雲行きが怪しく心配になります。予想しなかったわけではないとしても、周囲のストロングマンである米中日に加え、北朝鮮までが混乱した政情を押し付けてきています。このような時局に政府がまともな外交力を発揮することは容易なことではないでしょう。
中国は強硬、北朝鮮は威嚇、アメリカはどこにどう飛ぶか全くわからない新大統領の就任式がまもなくという最中に、釜山日本領事館前の少女像問題に火がつきました。
深い考えもなしにそこに少女像を立てたのも考えものですが、朝日新聞は社説で国家間の外交には性急な対抗よりも熟考を願うとして、日本政府の強硬措置を批判しつつも、歴史認識のような政治問題と経済外交文化協力は分離して考えようというのが、日本政府の立場だといいます。
MB(李明博政権)の後半から冷えこみはじめた日韓関係は、さらに深いトンネルに入り込もうとしています。世界は狭くなりました。引っ越すこともできない隣国との関係がぎすぎすとせず、良くなるように互いに努力し続けていかねばならないのが、私たちの宿命です。
こんなにも小さな、しかも片割れの世界唯一の分断国家で、ある小さな女性が生涯平和を念願しつつ逝きました。
'東亜細亜の涯の国に生ひたちし吾ひたすらに平和を祈る'
孫戸妍歌人の短歌
誰に知られることなくとも、生涯をかけたその念願が、これ以上必要のない世になる
ことを切に願ってやみません。
孫戸妍李承信 親子詩人の家
ソウル 鐘路区 弼雲洞 90
李承信