カルチャーエッセイ

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痛み

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  • 2020.03.19 11:44

 

 

2020  3  14       

 

李承信ので書くカルチャーエッセイ


痛 み

  

何ヶ月か前から腰を痛めていましたが、これ以上がまんできずにとうとう手術を受けました。これまでがまんしてきたのも人間の限界を超えていましたが、位置が腰だけに当分は動いてはいけないとのことで、大変なことは相変わらずです。

 

ちょうど国内はコロナウイルス拡散の絶頂期で、テレビではコロナ関連ニュースと政府批判が繰り広げられていますが、現在右にも左にも横になれない私には聞こえもしませんが、一日中そんな調子なのでストレスが募るばかりです。

 

コロナのせいで国内外が大騒ぎなので、病院はいつもより閑散としています。みな入院や治療を見合わせているのでしょう。やるせない気持ちですが、私も2週間の入院期間の間、家族や知人のお見舞いを受けられませんでした。

 

でも、看病人がつけるテレビまで制することはできません。よいニュースでさえ聞けない状態なのに、どのチャンネルも終日やっているのはコロナ感染者数やマスク購入のための行列、それに関する深層討論といったぐあいで、二重三重の苦痛です。

 

そんな中、幼い孫娘 FarrahからKakaoTalkで写真が一枚送られてきました。

手にしたカードの手紙には直接絵を描き、郵便局へ行ってチョコパイ100個を大邱(韓国における最大の感染地域)病院に送ったとのことです。

カードには韓国を助けて下さい。ありがとう。I pray that Gods blessings be with you always! Farrah Chungと書かれています。

 

いつもかわいらしいことをするこの子は、今度もこの事態の初期から大邱病院で苦労する医療陣に手書きで美しい心を表現したのです。

 

体が大変で聞きたくもないニュースを避けようとしていた私は、その純粋な心に接して恥ずかしくなりました。それで大邱のニュースを見るようになりました。

 

大邱には何度か行ったことがありますが、個人的な縁があるわけではありません。

大邱といえば、中高大学までいっしょだった友達のジョンジュのことを思い出します。彼女は梨花女子中学校2年生のとき田舎^^の大邱から転校してきたのですが、中12学期から私のものだった全校1位の座を中3になってすぐ奪っていきました。

 

当時の私はおとなしくて素直で競走心もなく、悔しくもありませんでした。ジョンジュは誠実で落ち着いており、何よりも母親から譲り受けた篤い信仰心をもっていました。私たちの学校はミッションスクールなので、意味もよくわからずに聖書の句をおぼえ、校内礼拝をあげていましたが、彼女は本物でした。

 

たくさんの愛と助力を与えてくださった詩人キム・ジョンギル氏の故郷のお話も思い出されます。

 

大邱におられる方々はもちろん、そこを故郷とする方々もどんなに心が痛いことでしょうか。

 

たくさんの医療陣とボランティアが全国から大邱に押し寄せているといいます。感染するかもしれないと何とかして先に逃げようとするこの時期に、自分が医者になったのはまさにこのときのためといって、感染者の中に飛び込んでいくその献身は驚くばかりです。

 

寝返りをうつことすらかないませんが、大邱のニュースから目を離せません。そんななか目に止まったのは、アメリカのABCニュースの報道です。特別管理地域に指定された大邱は、恐慌状態でもなく暴動もなく、節制と沈着、そして静けさがあるとリポーターが伝えていました。

 

クリスチャン大学である啓明大学東山病院院長のインタビューも目をひきます。24時間休みなく命を救うために働く彼は、こう語りました。

「私たちは病院が大邱市民を救うためのノアの方舟だと思っている。それほど深刻な病気ではないき。必ず打ち勝つことができる」

 

アメリカ有数のテレビチャンネルであるABCを通して伝えられる東山病院代表のこのメッセージは、私を感動させたように世界を感動させるでしょう。

 

突然の危機が国家を襲うと、国とその国民の格が満天下にさらされることになります。ちょうど9年前の3月、東日本を巨大な津波が襲ったとき、全世界が日本人をみて人類の進歩と感嘆したことが思い出されます。あのとき、もし韓国に同じことが起こったら修羅場と化すことなく同じように行動できるだろうかと考えました。電気、ガスが止まり、食べ物や生活物品が1ヶ月以上ない状態が続く中、何時間も行列にならび、やっと受け取った食べ物すら後の人に譲っているのです。お金に応じて国の格が上がるわけではないのです。

 

今、大邱の人々が静かに節制心を発揮していると世界的な報道機関が言及していることが、本当にありがたく、誇らしくてなりません。 

 

実際に、コロナ自体よりも恐怖を煽る諸般の事情の方が問題だとも言われています。根源である中国と地理的に近く、コリアにはたくさんの感染者が出て、地球上のたくさんの国が韓国人だからといって入国を拒まれる侮辱を受けていますが、患者が孤立しているそこは‘ノアの方舟’であり、そこに働く人々の無私と誠とによって必ずや事態は終息することを信じることができます。おいしいリンゴの産地としてのみ知っていた大邱を見直す契機になります。

 

危機の大邱にこんなにも堅固な信頼を見つめながら、世界節制会での責任と富める者の道理を黙々と果たしている我が大邱友、キム・ジョンジュ延世大学教授のことを自然と思い浮かべました。

 

長い間耐えに耐えながら、ようやく受けた手術から回復しなければならない宿題が残っています。

 

この痛みもいつかは癒えるという確信、打つ勝つことができるという確信、これからこそが人生の本番を生きるときなのだという心を持つようになりました。

 

 

 

 

マスク大乱

大邱の医療陣

 美しい心を描き送った 8 Farrah ジョン  -  2020 3

 

  

 

 

 

 

 





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