カルチャーエッセイ

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偏見越えて韓流に

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  • 2013.08.28 18:46

 中央日報       2007  11  17

 

 


 

  

[エディターコラム]  孫戸妍、偏見を越えて韓流に  

    

世の中に偶然ということはない。たとえば2005年6月20日、小泉日本総理が廬武鉉大統領との頂上会談の途中、いきなり詩を詠んだこともそうだ

 

‘切実な望みが一つ吾れにあり争いのなき国と国なれ’

 

短いが明らかにメッセージが込められている。

唯一の韓国人短歌詩人である孫戸妍1923~2003の作品だ。

短歌は 5·7·5·7·7の5句節31音形式の日本の伝統詩であり、日本人が最も大切にする国詩である。小泉総理は数多くの作品の中から孫詩人の詩をどのようにして探し出したのだろうか。

 

事情はこうである。詩人の長女である李承信(ギャラリー‘ザ・ソホ’代表)氏が頂上会談を前に、森元総理と日本の作家に母親の作品集と一代記をあつかったドキュメンタリーを送った。

 

ここには孫詩人が1998年天皇の主催する新年御前歌会に外国人としては初めて参席した場面が含まれていた。孫詩人は韓服を着て、最高の大家の資格で天皇皇后両陛下が朗読する詩を聴く栄誉をうけた。NHKが全国に生中継した。

これに先立ち97年6月、日本人たちは青森県に孫詩人の詩碑を建て、そこに

 

‘君よ吾が愛の深さを試さむとかりそめに目を閉ぢたまひしや’

 

という、日本人の心琴を濡らす絶唱の亡夫歌を刻んだ。

孫詩人の存在は再び日本のある参議院議員を経て、小泉総理に知られることとなり、ついには朗読にまで及んだのである。

 

常にそうであるように、ここでも残念なことが一つある。廬大統領はなぜこれといった反応をみせなかったのかということだ。

小泉総理が詩を引用した後、“私もこのような心で両国の関係発展のために努力したい”とまで語ったことを思えばなおさらだ。

我らが大統領が“孫戸妍にはこんな平和の詩もある”と受け返したらどうだったろう。

 

‘隣いて胸にも近き国なれと無窮花を愛でてさくらも愛でて’

 

日本精神の精髄である短歌を朗読する韓国の大統領の姿がTVで放映されたときに日本人たちの見せる反応は創造に難くない。

 

事実、青瓦台の秘書室は、小泉総理が頂上会談で孫詩人に言及する可能性があるという話を事前に李承信氏から聞かされていた。李承信氏は“小泉総理よりも廬大統領が先に母の短歌に言及したほうがよい”とも意見したという。

しかし、‘日本人の愛する韓国詩人’が歌った‘両国間の平和と愛’を主題に二つの国の指導者が繰り広げる格調高い文化的対話はついに成されずじまいだった。

 

このエピソードは、両国間の複雑微妙な側面をよく見せてくれている。

 

36年間韓国を植民地として統治した加害者である日本は、一種の罪意識を感じながらも両国の客観的現実と未来について積極的に言及した。うまくいっている者の余裕だろう。

しかし、被害の傷がいまだに癒えないからだろうか、我々には日本がなぜか負担に感じられ、遠い存在だ。感情がうまく整理されないから時には現実から目をそらしたくなりさえする。

 

このような雰囲気は孫詩人の生涯にもずっと暗い影を落とした。晩年にわが政府から勲章を授けられたとはいえ、生涯“なぜ韓国人が日本語で詩を書くのか”と非難された。

しかし詩人は誰よりも成功的に韓国の伝統的情緒を日本人たちに紹介した。詩人の詩は決して日本の詩の亜流ではなかった。

日本の有名出版者である講談社から出した六冊の歌集のうち、五冊のタイトルは‘無窮花’だった。無窮花は韓国の国花だ。

 

短歌の根が1400四年前の古代日本に文化を伝えた百済であるという事実を詩人は片時も忘れたことがない。‘チマチョゴリ装いながら吾れは嗅ぐ千歳の前のその残り香を’と歌った。解放・分断・戦争の歴史も込めた。

 

‘この民が無口のままに従いし汚辱の日をば見極めし無窮花’

 

こうして国境を越えた人間の普遍的情緒を解き明かしたので、日本人も思う存分にそれに浸ることができた。

 

‘冬のソナタ’とヨン様(ペ・ヨンジュン)で絶頂を迎えた韓流だが、最近は以前のようでない。日本人の情緒を鷲掴みにするコンテンツが生産されていないためだ。

 

そのため孫戸妍を再び考えることになる。孫詩人が60年間に創作した2000余首の短歌は、天皇と平凡な市民の心をすべてとらえた。そうでありながら韓国的情緒と価値に対する共感を起こさせる。

 

戦争でも貿易でもスポーツでも不可能なことだ。このくらいであれば立派な韓流として評価すべきではなかろうか。

 

日本的要素を不穏視する厳しい偏見と独り戦い、ついには韓・日文化交流の象徴としてそびえ立った孫戸妍の熾烈な人生は涙ぐましい。

 

 

                                    イ・ハギョン文化スポーツ担当エディター


 

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