李承信の詩で書くカルチャーエッセイ
花切手 スピーチ
東日本を襲った大震災を韓国で連日見守りながら、涙を禁じえませんでした。
生涯韓国で短歌を作り続けた母を愛し、青森に歌碑を高く建ててくれた日本人を襲ったその大震災をもし母が見たなら、悲しみながらも真心のこもった一行の短歌で励ましたことだろうと思いました。
昨日、青森で見た母の歌碑には、こんな愛の短歌が刻まれています。
君よ吾が愛の深さをためさむと かりそめに目を閉ぢたまひしや
その母がもういないので、一つ一つ私が書き続けたものが250首となり、その短歌のうち‘花切手’を工藤雄一先生が選び、美しく手を入れて作曲し、韓国ドラマ“アイリス”のロケ地として有名な秋田県でこうして発表することになったことを、大変嬉しく、ありがたく思います。
願わくば、苦しみの中にある皆さまが力と慰安を得ることができますように。韓国の文学と日本の音楽で、日韓間の善なる心をつなぎあわせようとする工藤雄一先生の思いが成就しますことを切に願ってやみません。
母の生涯の念願であり、私の望みでもあります。
* * * *
こんなスピーチを日本語でし、韓国語と日本語で詩を朗読をした後、工藤雄一博士のオーケストラの指揮で200余名の合唱団とソリストが歌をうたいました。2番は
曲なさった工藤博士がソロをとり、私はそれを舞台の上に座って鑑賞しました。
幕の下りた後にも雷のような拍手がしばらく続き、全てが終った後、ロビーに私を待つ人々の列が長く伸びました。私の小さな心遣いに大きな感激で応えてくれた人々の表情と心に、むしろ私が感動しました。
このような機会は、2013年3月に東京で開かれた私の“君の心で花は咲く”の出版記念会に、日本の著名なジャーナリストにして天皇の同期生でもある橋本明先生がご参席くださり、感銘を受けられたのか、その詩の作曲を工藤先生に依頼したことがきっかけとなりました。既に東京では二千名収容の音楽ホールで二回の公演をし、秋田市でも今度が二回目です。
マスコミを通しては、お隣同士の葛藤と否定的な面ばかりが強調されて見えますが、実際に一人の人間対人間として対すると、互いの心が暖かく伝わってくることを感じることができます。
永遠に引っ越すこともできない私たちとしては、互いに仲良くなれるよう、先に近づいて努力し、お隣同士のよりましな関係、よりよい世の中を私たちの後孫たちに受け渡してゆかなければなりません。
花だけの春などあろうはずはなし
春の来らぬ冬もなし
花切手 切なる思いを伝えんと
君に送ろう届けとばかりに
苦しみと痛みの続く日々なれど
朝の来らぬ夜はなし
花切手 輝く朝日に思い込め
空に送ろう届けとばかりに
心して強く生きよう今日の日を
君が望んだ今日の日を
花切手 明るい明日に思い込め
天に送ろう届けとばかりに