孫戸妍の短歌三十一文字には愛と平和の精神が
中央日報 2013 11 26
中西進前京都芸術大学総長と李承信詩人が孫戸妍歌人について語り合っている。[アン・ソンシク記者]
「孫戸妍の短歌には国境を越える愛と平和への切実な願いがあります。それが人類の未来を開く鍵なのです」
中西進前京都芸術大学総長は、この時代を生きる人々が歌人孫戸妍を記憶しなければならない理由をこう説明した。
短歌歌人孫戸妍の十周忌に参席するために訪韓した中西氏に、去る22日ソウル弼雲洞90の‘孫戸妍歌人の家’で会った。十周忌行事を企画準備した歌人の長女で詩人の李承信氏が同席した。短歌は感性と思考を三十一音に込めた短詩で日本の国詩だ。
この日の行事では、ファン・ビョンギ氏が作曲した孫戸妍歌人の短歌四首をテーマとした‘戸妍四題’の大芩と唱と太鼓による初演があり、李承信氏が母の遺した短歌の中から百一首を選んで韓国語、日本語、英語、フランス語の四ヶ国語に翻訳した『孫戸妍歌集』を出版・献呈した。
この日の行事には、別所浩郎在韓日本大使、チェ・サンヨン前駐日韓国大使、ダニエル・オリビエ仏文化院長、仏作家のジャン・トゥッセン、イ・スンユン前副総理、チェ・ソミョン国際韓国研究院長、キム・ドンホ文化隆盛委員長、ユ・ミョンファン前外交部長官等、300余明が集った。
李氏は「日本の帝国主義時代に生れ、東京に留学して短歌を学んだ母は、解放後短歌をやめるべきかを半世紀以上悩みましたが、『途中で放棄するな。日本の真似をせず朝鮮の美しさを書け』という師との約束を最後まで守り、国境を越えて人類愛を歌いました」と回想した。
孫戸妍は63年間に2000首以上の短歌をつくり、短歌集『戸妍歌集』と 5冊の『無窮花』歌集を日本の代表的な出版社である講談社から出版した。1997年には青森県に歌人を称える歌碑が建てられ、1998年には日本の天皇が宮中における'歌会始の儀'に大家としての資格で招請しもした。
中西氏は「1000年前の日本の本には、短歌の力で男女の愛が芽生え、鬼神も短歌の力で退くと記録されています。短歌は愛の力を歌います。その短歌を通して孫戸妍は平和を願いました。歌人の人生と遺された短歌を通し、愛と平和をかみしめるときです」と歌人孫戸妍を称えた。
中西氏は『万葉集』研究とアジア文学比較研究の功労により、去る11月3日、天皇から日本文化勲章を授与された。この勲章は世界大戦の影が深く立ちこめていた1935年に‘文化の力’で戦争をなくそうという趣旨から当時の日本の知識人たちによって作られたものだ。
『万葉集』は日本の最も古い本で、古代の詩歌を集めた詩集だが、約 4500首の詩が収録されており、うち4000首以上が短歌だ。わずか三十一文字に作者の感情と思想をこめる短歌の特性のため、単なる心情表現や風景の描写ではない‘核心のみを込める’ことに特徴があるというのが中西氏の説明だ。
「必要のないものはすべて捨てるので短いです。方法自体は簡単なものです。しかし、何を残すかを決めるのが非常に難しいのです」
この日の行事のテーマは‘孫戸妍歌人十周忌に考える韓・日’
チェ・サンヨン前駐日韓国大使は「両国の指導者が孫戸妍先生の平和のメッセージを政治に反映してくれることを望みます」語った。
李承信氏は「母が生きていたら、今日の日韓関係を見て心を痛めたことでしょう。隣国同士がどうしたことかと言いながら、より強い心を込めて短歌を詠みはしないだろうかという思いがよぎります」と残念がった。
中西氏は「各国が自国だけの利益を考えていれば平和は訪れません」とし「全地球的な利益を考えなければなりません」と強調した。
記事=パク・へミン記者
写真=アン・ソンシク記者