日本文化交流賞を受して
2008 9
"隣りいて胸にも近き国なれと無窮花を愛でてさくらも愛でて"
わたしの母で歌人の孫戸妍は63年間、愛と平和の心を一行詩である短歌に書きしたため
てきました。
死のわずか前、病院の透析室で体中の血をかえる透析を受ける姿があまりに切なく、慰
めるつもりでこう言いました。
「お母さん、日本の川端康成は自分の国では誰も認めてくれなかったのに、フランスで
翻訳が出てから知られ始めてノーベル文学賞まで受けたんですって。お母さんがもしノ
ーベル賞を受けるとしたら、文学賞と平和賞のどっちかしらね」
母は常に謙遜で、わたしはただ笑わせるつもりでそう言ったのに、体中に注射針を刺し
た母は起き上がって姿勢を正し、しばらくじっと考えた後、「平和賞だろうね」と言い
ました。わたしはその瞬間気づいたのです。母が今まで生涯を通じてなしてきたのは短
歌を書くことではなかったのだ、あるがままの心を表現したところ、それが短歌になっ
たのだということを。
母のその愛と平和の精神を伝え広めようと、母の短歌を韓国語、英語、フランス語に翻
訳して本として出版し、音楽と絵画としても発表し、TVドキュメンタリーとしてニュー
スに流し、新聞のコラムにも載せ、韓国と日本とアメリカで『孫戸妍平和の夜』という
行事を催してきました。
わたしは実は日本よりもアメリカで長く仕事をしてきたアメリカ通ですが、今日のこの
意味ある日本政府の賞に励まされ、母があれほどに望んだ韓国と日本の平和な関係はも
ちろん、全人類が愛と平和のなかで一つになる日のために、これからも精進していくつ
もりです。
ほんとうに、ありがとうございました。