産経新聞 2011年10月8日
[外信コラム] ソウルからヨボセヨ
感動と激励の短歌集
何ごとぞまさしくこれは何ごとぞ世の終末か言葉失う
惨事にもなお慎ましきその列は切なる祈り吾らへの教示
危機の中さらに際立つ真(まこと)の美日本の配慮と忍耐こそは
韓国人として初めて日本の宮中歌会始に招かれた歌人、孫戸妍ソン・ホヨンさん1923~2003年を母に持つ詩人、李承信(イ・スンシン)さんが最近、東日本大震災の 日本人に思いを寄せた詩集『花だけの春などあろうはずもなし-短歌で綴(つづ)る日本人への手紙』を韓国で出版した。
彼女はソウルで“文化空間”としてギャラリー・レストラン「ザ・ソホー」の代表でもあり、短歌を通じ日韓の理解と和解を詠み続けた母の志を継ぎ、これまで母の歌集の韓国語や英語への翻訳出版、朗読会やコンサートなど記念イベントを開き、2008年には日韓文化交流基金賞を受賞した。
歌詠みの母なら君に伝えしを同じ痛みを分かつ心を
その節制、忍耐、配慮、その毅然、亡き母の内に吾見たるもの
大人なら心で泣けと諭し母心で泣く君見て思い出す
日本人を「君」と呼びかけ感動と激励を詠んだ短歌は約200首。韓国語訳も付いている。
先駆けて進む国のみ示しうる犠牲と毅然(きぜん)言葉少なに
一握の光かざして踏み出せばすでに遠くにかすむ悲しみ