漢江を見おろすソウルウォーカーヒルホテルの芝生で、現在東京とニューヨークで活動中の国際弁護士アンドル・ジョン氏の結婚式が開かれた。式の終盤、美しい韓服を着たジョン氏の母であり詩人の李承信氏がマイクを手にした。
「生涯短歌を書き続けてきた新郎アンドルの祖母は、30年前、海のように大きいアメリカの五大湖であるオンタリオ湖畔で生まれた赤ん坊を見、その美しい瞬間を短歌にしました。また、亡くなる瞬間まで初孫のアンドルを胸に留めて祈祷しました」。祝い客の手には‘胸深くに刻まれた一行の愛の詩’という副題がつけられた新郎の祖母の短歌集‘ラブレター Love Letter’が渡された。短歌とは韓国が日本に伝えた三十一音節の定型詩だ。
ジョン氏の祖母は、韓国の情緒をこめた短歌2000首を残し、日本でも‘短歌の大家’と呼ばれる孫戸妍歌人だ。歌人は東京留学時代から短歌を始め、2003年に逝去するまで、7冊の歌集を出した。孫歌人の短歌は‘玄海灘をつなぐ短歌の雲の橋’、‘日本列島を泣かせる無窮花の歌’と呼ばれている。国境を越えた愛と平和の詩として評価され、日韓両国で文化賞を受賞している。
2005年、靑瓦臺で開かれた日韓首脳会談では、小泉純一郎首相が演説中に孫戸妍の短歌‘切実な望みが一つ吾れにあり諍いのなき國と國なれ’を詠み、歌人の平和精神について語りもした。歌人は1998年、天皇陛下が主宰する歌会始めの儀に陪聴人資格で招請され、チマチョゴリを着て天皇皇后の短歌を陪聴した。
もう一冊の本が祝い客の手に渡された。‘孫戸妍 詩と絵 Son Hoyun Poems & Pictures’だ。
孫戸妍女史が日本語で書いた短歌を、娘の李承信氏が韓国語に、孫のジョン弁護士が英語に翻訳し、李承信氏が編集した‘三代詩集’だ。世界中の名な画家たちが歌人の短歌をテーマにして描いた絵を添えた三ヶ国語の短詩が胸を切なくさせる。